0007 宵張
「昨日三つ首のマッコウクジラに乗ってたらさ、急に腹が減ったとか言って鰯の群れに突っ込んでいくもんだからさ、やばいぶつかる!!ってオイラ慌てちゃって、急いでウィーザーディングタクトを取り出して振って、サーディントルネードを起こしてさ、なんとか進路を開けてやったよー。もうほんとヒヤヒヤした!」
夜が深まると、誰もが物思いに耽る様になり、日中では得られなかった広く制限のない想像力に身を委ねるものです。
寝る時間は疾うに過ぎているというのに、想像の世界の魅力に病みつきになってしまいます。
そう、冒頭いきなりわけのわからんことを言った妄想ゴリラもまた、夜に当てられてしまっているのです。
まったく、自己管理ができていないやつだ。
私みたいな大人であれば、夜はきっちり決まった時間に寝るのです。
睡眠は体だけだなく脳も回復させる大切なことです。きっちりやってこそ毎日高いパフォーマンスが出せるというものです。
え?もう深夜だけどお前いつ寝てるんだって?
まあ、今日は特別寝るのが遅くなってしまっただけだ。私みたいなスーパーエリートメガネザルにもなると、そういうこともあるんです。
え?目がギンギンだけどひょっとして徹夜続きかだって?
おいおい、何を言っているんだい君よ。私たちメガネザルはいつだって目がギンギンさ!知らなかった?困ったもんだよまったく。
え?君もメガネザルだけど私ほどギンギンじゃないって?
んもーこれだから一般猿は!まあ仕方ない、教えておいてあげよう!私はね、スーパーエリートメガネザルなんだ。スーパーエリートともなると目なんてもうギンギンさ。覚えとけぇ。
え?大丈夫かだって?
大丈夫に決まっているだろう君ぃー!なんてったって私だよー!そりゃ大丈夫さ!下らない質問ばかりしないでくれよ。
君に話したかったは、そうゴリラのやつが夜更しして妄言巻き散らかして困ったよってこと。
なにが三つ首のマッコウクジラさ。私なんてこの間、三匹のドーベルマンに乗って走っていたら、気がつくと一頭のケルベロスに変わっていたからね。
頭の数が変わらなかったけど、足の数は一匹分に減っちゃって、速度なんてガタ落ちさ。困っちゃったよほんと。ね!
お、夜が明けて来たじゃないか!また一日が始まるぞ。終わらないのにさ。
さあ、やるかー!